心の炎が消えぬ間に

ゲームについてのアレコレを、熱が冷めないうちに、気の向くままに書き連ねるブログ

終末世界に弔いを。【OPUS-魂の架け橋 感想】

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こんばんは。
インディーズゲーム探訪第3回は、「OPUS-魂の架け橋
前回紹介した「OPUS-地球計画」の精神的続編として作られた、終末世界を探索するアドベンチャーゲームです。

 

 

●どんなゲーム?


 "孤独に置かれた青年と少女は、終末後の世界で先人たちに代わり「宇宙葬」を行う事を決意した。
 死やすべての絶望を飲み込み、終わりの日に亡くなった霊魂達に安息を与える為に。"

 


OPUS-魂の架け橋(Nintendo Switch)

 

・基本情報
 ジャンル:見下ろし視点型探索アドベンチャー
 価格:¥999
 必要容量:458MB
 対応コントローラー:Proコントローラー
 対応プレイモード:TV/テーブル/携帯
 プレイ人数:1人
 セーブデータ保存数:1アカウント毎に1つ/オートセーブ方式
 (クリア後は探索モード/シナリオクライマックスを選択可能)
 その他備考:タッチパネル対応
       ムービーシアター有

 

 元々はスマホでリリースされたゲーム。
 2018台北ゲームショウにてインディーズゲームの「ベストストーリー賞」を受賞。GooglePlayおすすめゲーム選出ファミ通プラチナ殿堂など、各方面で評価された作品です。

 容量500MB未満と軽く、価格も約1000円とお手頃。99刻みの価格って意外と珍しい。
 本作は探索要素が強くプレイ時間は人によって幅が出ますが、テンポよく進んで4時間ほど、相当さまよっても6-8時間程度でエンディングまで辿り着けます。
 本作も冒頭で案内があるとおり、ヘッドホン等の使用を強く推奨します。
 終末を迎えた世界が舞台ですが、グロ的表現は無し。大丈夫、安心のCERO:Aだよ!

 

 ちなみに前作「OPUS-地球計画」の物語とは直接繋がっているわけではないので、前作未プレイでも無問題です。
 ↓のインタビューによると、-地球計画-の前日譚であるとのこと。

madewithunity.jp

 


●白銀の終末世界を歩く

 

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 本作の流れは

  「巫女」のフェイからロケット制作に必要な材料探しを頼まれる
   ↓
  「青年」ヨハンが外を歩き回り、材料や遺品などを拾い集める
   ↓
  工場に戻り、ロケットのパーツや探索に必要な装備などを作成する
   ↓
  就寝。次の探索へ

 という感じです。最初のほうでは行動がある程度固定されているので、プレイしながら段取りを把握できるようになっています。

 

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 基本画面は古典的RPGのような2D見下ろし視点となっており、雪と廃墟に覆われたフィールドを歩き回りながら必要なものを探していきます。寂寥感漂うBGMの流れるフィールドではヨハンによる各地の思い出をテキストで読むことが出来たり、住人達が使っていた遺品を手にすることが出来たり、時にはサバイバルのような局面に見舞われたりと、荒廃した世界を探索する雰囲気をたっぷりと味わうことができます

 

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 フィールドのあちこちには霊魂が漂っており、白い霊魂(の一部)は材料や遺品をくれたり話をしたりしてくれますが、赤い霊魂はヨハンを疲労させる厄介者なので避ける必要あり。疲労が限界に達すると倒れて強制的に工場まで戻されてしまいます。(倒れたとき専用のイベントもあるので、一度は見ておくのも悪くないですが^_^;)
 場所によってはカッターでフェンスを切るなど、装備が無ければ探索できない場所もしばしば。はじめは歩き回れる範囲に限りがありますが、ストーリーが進み装備が増える毎に探索範囲が広がっていきます

 探索中は時間の概念があり、じっとしていても徐々に右上の時計が進行し、日没になると視界が著しく遮られるとともに多数の霊魂に囲まれてまともに探索できなくなります。帰るときは帰還アイコンを選べば一瞬で戻れるので往復時間を考慮する必要はないのですが、能率よく探索する上では注意が必要です。

 

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 といった感じで、時間・装備の制約と世界観から「終末世界を探索する」雰囲気を強く味わえる一方で、ゲームとしてはシンプルな探索ものとなっています。いわゆるお使い要素が鼻につく人には少々厳しいかも。逆に廃墟好きだったり、各地の様子を伺うのを好む探索マニアな人にとっては存分に楽しめると思います。メインとなるロケットの材料以外にも様々なアイテムが遺されており、蒐集要素はなかなかに豊富です。
 なお、行き詰まった場合はある程度時間が経てばヒントを要請して目的地までナビゲートしてもらうことが出来るので、探索が苦手な人でも安心してストーリーを進められる作りです。ある程度行動範囲が広がると「地図」を作成することで、奥地まで飛ぶファストトラベル機能も使えるようになります。

 


●登場人物ふたりのやりとりが良い!

 本作の魅力は、宇宙葬のために奔走するフェイとヨハン、ふたりのやりとり。

 

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 巫女の使命感を背負いながら、前向きに気丈にロケットを作るフェイ

 

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 霊魂の声に悩まされながら、その解消のためにロケットの材料を集めるヨハン

 

 

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 ときには軽口を叩いたり、励ましたり、あるいは不満をぶつけたりしながらロケット制作を進めていく、その会話と、要所要所で流れてくるそれぞれの過去。ときに微笑ましく、ときに心苦しく感じるやりとりの数々が、終末世界の静寂の中でひときわ味わい深く感じられます。少しずつ明かされるふたりの来歴の見せ方も巧みです。
 荒廃した世界観に重苦しさを感じる方も少なくないのではないかと思いますが、本作の肝はその世界を生きるふたりの変遷の中にあります。ときに笑いときに傷つくふたりは、果たして霊魂達を弔うことができるのか。次第に物語に引き込まれていき、一気にゲームを進めたくなること請け合いです。

 

●各要素について

 

・システム:ローディングが数秒ある以外は概ね問題無し
 開始時や就寝時に数秒ロードが入ります。殺風景なLOADING表示はちょっと安っぽい…
 操作性は概ね良好ですが、選択肢を動かす際は左スティックのみ(左十字キー不可)なので少々戸惑うかもしれません。特にプロコンで十字キーを多用する人(わたしです)
 セーブは自動で行われますが毎朝の開始時と工場帰還時に行われる(右上にセーブ中の表記あり)ので、中断する場合はタイミングに御注意を。

 

・音楽:清涼かつ場面展開によく合った、秀逸なメロディ
 ピアノをメインとした、全般的にテンポよく透き通った作り。悲しさはあっても陰鬱さはそれほどなく、白銀の終末世界を美しく彩っています。特に終盤の楽曲は演出との相乗効果もあって感動的です
 効果音の存在感もよく、踏みしめる足音や建物に踏み入るときのドア音など、廃墟をゆく感覚を高める名脇役として強い印象を与えてくれます。

 

 ちなみにサウンドトラックを音楽配信サイトbandcampから試聴・購入可能です。
 個人的お気に入りは「To Celebrate,and Say Goodbye」「21 grams ft.Fei Lin」
 
OPUS: Rocket of Whispers (Original Soundtrack) | SIGONO

 

・クリア後要素:かなり大変/1つは入手不能の不具合あり(修正予定あり)

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 メインとなるロケット作成以外に、各地に遺された品を集めて修復するサブ要素があります。ストーリークリア後に入手可能なものもあるのでこれのコンプリートがクリア後要素と言えるのですが、かなり大変。
 壊れた品物の本体部分は歩き回れば発見することは難しくないのですが、修復の材料のひとつである「霊魂石」の回収が難しいのです。他の端材類と違って有限かつ建物の隅っこや木々の奥などにひっそりと置かれており、遺品類と違ってヒントも出ません。私は各地を歩き回りましたがまだ10個不足しています。
 そして、遺品のひとつである「ボロボロのぬいぐるみ」には入手不可能になる不具合があり、私のデータでは回収が出来ない状態になっています(´;ω;`)ストーリーをやり直してクリア前/後それぞれのタイミングで回収を試みましたがダメでした(> <)
 出現フラグがおかしくなってしまっているのかなぁ… 
 調べてみたところ以前のスマホアプリ版にもあった不具合だとか…問題なくコンプリートできた方もいるようで条件はよく分かりませんが、現状ではコンプできない可能性が高いと言わざるを得ません。修正パッチの配布、待ってます。
 ちなみにコンプした方の記事によると、コンプリートで変化する要素は無いとのこと。

 ※7/10追記:制作のSIGONO様から修正パッチを作成中とのメッセージをいただきました。配布されましたらまた追記します。

●「弔う」ことを想う作品

 

 以上、「OPUSー魂の架け橋」についてでした。
 
 ゲーム性としては、フィールドを歩きまわって材料を集めるぶん前作「OPUS-地球計画」より高めではありますが、やはりゲームを通して物語や世界観を味わう類の作品です。コンプリート要素に不具合があるのは残念ですが、ストーリーの展開と演出が素晴らしく、クリアまででも充分に楽しめます

 

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 「OPUS-地球計画」のときはエンディング後に様々な余韻を感じましたが、本作のエンディングでは感無量というか、心が洗われたような感覚にしばらく浸っていました。

 ポスト・アポカリプスというジャンルには様々な切り口の作品がありますが、「過去を弔う」ことにスポットを当てた作品は珍しいといえるのではないでしょうか? 本作の世界は随所に荒廃と悲しみが満ちた廃墟ですが、その中で繰り広げられるこの物語は決して終末の悲しみと不毛さに沈み込むだけではなく、終末の後を生きるための熱を感じさせる物語だといえます。荒廃した世界観に惹かれる方はもちろん、人間的なドラマを求める方にも強く応えてくれる作品だと思います。
 興味のある方は、是非プレイしてみてください。

 

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