孤独にあがく夜のための物語【OPUS-地球計画 感想】
こんばんは。
今回は、インディーズゲーム探訪第2弾「OPUS-地球計画」です。
実はインディーズ巡りをするにあたって、一番プレイしたかったタイトルでした。わくわく。
●どんなゲーム?
まずは紹介動画をどうぞ。ゲームの雰囲気がよく出ています。
・基本情報(Switch版)
ジャンル:宇宙探索アドベンチャー
価格:¥500
必要容量:502MB
対応コントローラー:Proコントローラー
対応プレイモード:TV/テーブル/携帯
プレイ人数:1人
セーブデータ保存数:1アカウント毎に1つ
(クリア後は探索モード/シナリオクライマックス/データ初期化を選択可能)
その他備考:タッチパネル対応
ムービーシアター有
ヒント機能の有無を切り替え可能(開始時あるいはオプション内)
500円のワンコインプライス。容量も1GB未満と軽く、気軽にDL可能です。
ゴールドポイントでまるまる引き換えることもできそうな価格ですね。
プレイ時間は、ヒント有のモードでクリアまで2時間。探索要素100%まで含めても3時間程度で終わります。
冒頭にも案内されますが、ヘッドホン等の使用を強く推奨します。臨場感が段違い。
私は携帯モード&カナル型イヤホン(&深夜に部屋消灯)でプレイしました。
●ゲーム内容はコンパクト、詰まり防止機能もアリ
このゲームの流れは
探査情報を元に望遠鏡で地球(あるいは他の天体)を探す
↓↑
宇宙船OPUS号でキャラクターの話を聞いたり部屋を調べたりする
の繰り返しになっています。
探査のヒントは最初はシンプルでハッキリしていますが、ストーリーが進むにつれて徐々にヒントが抽象的になります。といっても、コツを掴めば探査は難しくありません。分からなくなってしまった場合は「ストーリーモード」ならばヒントを使用して詰まることなくプレイすることができます(ヒントは時間経過で使用できるようになり、おそらく3回使用すると答えの場所に飛ぶことが可能)
船内は最初は望遠鏡のあるエリアしか様子を伺えませんが、探査していく毎にストーリーが進み、徐々に下のエリアの様子が明らかになっていきます。船内探索そのものはゲーム進行に必須ではありませんが、各部屋の様々な品を調べることで、各登場人物の人となりやOPUS号に起きた出来事を推測することが出来ます。物語を楽しむためにあちこちを調べるのをお勧めします。
総じて、ゲーム内容は非常にコンパクトな作りになっています。アドベンチャーですが物語を進めるうえで推理等を求められたり分岐点があったりすることはありません。一方でOPUS内部の様子や発見済みの惑星に添付されたリサのメッセージなど、謎を推測するための材料はあちこちにちりばめられており、物語の真相を探る楽しみは(ストーリーの本流とは少し距離を置きつつも)きちんと用意されています。
●ワンコインで数時間プレイの手軽な、しかし没入感のあるアドベンチャー
eshopの紹介ページに”1本の短編小説を見た後のような満足感を”とあるとおり、本作は短編小説1本ぶんの値段と内容というのがピッタリ当てはまっている作品です。
ゲーム性といえる要素は望遠鏡による地球等の探索くらいで、しかもそれは比較的単純なもの。基本的には望遠鏡で星を観測する雰囲気と登場人物の言動、そして作中のテキストを楽しむ作品になっています。なので、ゲームに対して「操作をこなして得る動的な醍醐味」を求める人には合わないかもしれません。良くも悪くも短編アドベンチャーとして特化した作品です。
そのぶん、肝となるストーリーと演出はなかなかのもの。寂寞とした宇宙空間とOPUS号にはSF作品らしい冷ややかな不気味さがちらつき、意固地なところを見せつつも健気に地球を探し続ける主人公エムの言動にはハートフルな温かみがあります。望遠鏡から覗く宇宙の煌めきは美しくも虚無的であり、「虚空に囲まれた孤独の中で、何処にあるのかも分からない故郷を探し求める」感覚に浸ることができるでしょう。
●各要素について
・システム:操作性は良好。マップは欲しかったが、ゲーム性を考えれば妥当か。
元々はスマートフォン用だったことから、タッチ操作の名残りが各所に見られます。タッチ操作も可能ですが、Switch版としてローカライズされるにあたってボタン操作がそれぞれに割り当てられており、画面タッチ無しでもストレス無くプレイできます。画面遷移等もキビキビと軽快に動きます。
望遠鏡モード時はエリアのどのあたりにいるのか位置を掴みにくく、探索範囲が広がるストーリー後半は迷子気味になるかもしれません(そういう方は前述のヒント使用を推奨します)全体マップが欲しい気もしましたが、100%探索完了まで3時間程度という短さやストーリーとの兼ね合いを考えると妥当かも。広域マップがあると作業感が強すぎて惑星探索しているという没入感が薄くなりそうなので、個人的にはこれでいいかなと思っています。
・音楽:時には寂しげに、時にはドラマチックに
ヘッドホン推奨と謳うだけあって、ゲームの雰囲気を力強く演出しています。
細かい部分になりますが、個人的には望遠鏡を起動するときの駆動音がかなり印象に残っています。マニアックすぎるかな? ストーリー展開がどう転んでも駆動音は同じはずなんですけど、起動音を聞きながら探査に向かうときに感じる印象は違ってくるのだから、不思議なものです。
・クリア後要素:ちょこっと。
メインの地球探査以外に、OPUS号のあちこちにある情報を元に恒星・銀河・超新星等を探索するサブミッションが用意されています。ヒントが限られている分、メインよりも難易度は高め。一部は(おそらく)メインストーリークリア後に探索が解禁されるので、クリア後もちょこっとだけ探索を続けることが出来ます。よって初回クリアのみでミッション達成率100%にはできないと思われます。ちなみに100%報酬は特に無し。ちょっとしたおまけ程度の要素です。
・ボーナス:要英語力。
ストーリークリア後に解禁される「ボーナス」の項で開発者からのボイスメッセージを聞くことができます。音声メッセージとは珍しい…ただし英語音声なのでリスニング能力に欠ける私には内容を理解できませんでした(>_<) フライハイワークスさんにはここまでローカライズ頑張ってほしかった ところどころの単語から察するに、開発裏話の類かな…と思っています。違っていたら教えてください()
●宇宙の孤独にシンパシーを感じる貴方に
アドベンチャーゲームの感想って難しいものですね。特に本作は短編なので開示情報次第では魅力の多くがスポイルされかねないところがあります。とりあえず自分のやりたいように書いてみましたが、如何でしょうか。
では、以下ちょっと踏み込んだ感想を。モロなネタバレはしませんが、気になる方のために改行します。
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散々短編だ2-3時間だと書きましたが、内容はしっかりと味わい深いものがありました。進行とともに変化する状況と、終盤のグッとくる展開。各所に散りばめられた情報から推測できるOPUS号の過去と、リサ達の想い。ゲーム性自体は薄いですが、書籍でも映像作品でもなくゲームだからこそ出来ると言える魅力的なアドベンチャーです。さすがにフルプライスの大作のようなボリューム感はないものの、断片的な情報を元に考えられることも多く、プレイしていた時間以上に物語の余韻や推測をじんわりと楽しむことができた作品でした。
エムの綴りとか、リサが惑星に付けた名前とか、興味深いですね
クライマックスでは主人公のエムが涙ぐむ場面があります。機械である彼が涙ぐむのはリアリティに欠ける…というと野暮かもしれませんね。この物語は宇宙探索を前面に出しながら、孤独の中で「目標」を達成すべくあがき続ける者を描いた極めて人間的な話です。その結末に涙を見せるのは必然といえるのかもしれません。あるいは涙を見せる心無くして、エムがあの結末に辿り着くことは出来たのだろうか…などという気持ちも浮かんできます。
エムのように孤独の中でなにかを達成せんとする方にとっては、この物語からシンパシーや感慨をより深く感じられるのではないかと思います。美しく寂寞たる宇宙と向き合いながら、たったひとつの星を探す物語。心引かれるものを感じた方は、是非プレイしてみてください。