心の炎が消えぬ間に

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様々な工夫が光る、2DRPGの新しい風【オクトパストラベラー(導入部感想)】

 

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シリーズものでない2DRPGにハマるのって何年ぶりだろう。

 

こんにちは。今回は表題のとおり、オクトパストラベラーについて。
7/13発売直後の三連休に各地で完売となり、大きな話題となった新作のロールプレイングゲームです。

私の現在のプレイ状況は、20時間、8人の第1章をクリアして絶賛道草中、主人公トレサのLvは25とまだ序盤を脱したくらいの域ですが、スタート直後からでも感じるこのゲームの魅力的なポイントを4つ、挙げていきたいと思います。

 

 

・HD-2Dによる、入り込めるジオラマのような世界

 

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まず特徴的なのが、公式サイトで"HD-2D"と名付けられている、ドット絵を基調に3DCGの画面効果を組み合わせた映像表現。
生い茂る草木、荒々しく雄大な山地や洞窟、素朴さや年季を感じさせる建物などを表現しているドット絵からは、華美さよりも純朴さを強く感じられます。その光景に、陽光や洞窟から漏れる光、銀色にちらつく雪、日光を受けて煌めく水面といった光学演出が加えられて、既存の2Dとも3Dとも異なる独特の味を感じられるフィールドに仕上げられています。

 

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2Dドット絵は今日主流の3DCGのような色鮮やかな光景や細かい置物の表現を目指すと見た目の雑味が強く出てしまう難点があります。しかしこのゲームのようにセピア調に寄せて西洋ファンタジーの世界観を表現するスタイルなら、独特の味を存分に活かすことができ、あえてドット絵を採用する理由を充分にアピールできています。そこに古典ゲーム作品では難しかったキラキラと鋭く光る輝きや遠景のぼかしなどが加わり、かつての2DRPGから一段上に踏み込んだ進化した2D表現になりました。

 

個人的に感じるのは、模型のジオラマのような表現、ですね。
汚しや使い込まれた風合いの自然・構築物と、光や空気感の演出の組み合わせ。
ジオラマの中を操作して散策しているかのような魅力を感じます。

 

・遠近法とちょい見せで「ちょっといい探索」を誘うフィールド構成

 

このゲームをプレイしていて強く思うのは「複雑さのレベルを一定以下に抑えてプレイヤーの混乱を防ぎ、"発見"から深掘りしてもらうポイントを仕込んで奥深さを味わってもらう」という設計思想です。

 

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例えば、各地の街道や洞窟などのフィールド。基本的に2Dのフィールドマップは「A地点からB地点(あるいはダンジョンの最奥)までの本道と、枝分かれする複数の袋小路」の形式になるものですが、このゲームは何もない袋小路が極力抑えられているようで、大抵はご褒美の宝箱が用意されています。
また袋小路も一方向をまっすぐ進んだら行き止まったというスタイルだけでなく、画面の手前や奥を活用して「宝箱がぼんやりと見えるが、あの場所まで行く枝道はどこだろう?」というような探求心をくすぐる構造があちこちに用意されています。これもまた、過去の2DRPGにあった単純に上から見下ろす平面型のマップでは出来ない、HD-2Dによる奥行き表現によって進化したフィールド構成です。

 

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と書くと歩き回るのが結構大変そうに感じるかもしれませんが、少なくとも序盤のうちに歩き回れる範囲(危険度Lv25くらいまで)では、各マップはそれほど広大複雑ではなく、寄り道のご褒美をある程度用意しつつ自然と構造を覚えられる程度のサイズに収められています。
もし探索中にピンチや迷子になったときはメニューの地図からファストトラベルを使って各地の街へ即座に帰還することが可能ですし、(どこでもセーブは出来ない仕様ですが)セーブポイントも街道・洞窟を問わず各地に1つ以上用意されており、音を上げることがなるべく無いよう配慮・調整された作りだなと感じました。


・シンプルな街の作りと、街人達の存在感を広げるフィールドコマンド

 

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拠点となる街の構成は一見するとシンプルです。回復施設の宿屋、装備とアイテムを売買できるショップ、そしてパーティ編成を入れ替えられる酒場。会話できる人物は一部の吹き出しが出ている人に限られており、RPGの拠点としての必要条件をストイックに押さえた設計に見えます。
私は街を見つけると会話からアイテムから総ざらいを始めてしまうタイプなのですが、このゲームの街はかなりコンパクトで、細々とした探索に時間を要しない点はありがたい反面やや物足りなくも…と思っていました。最初だけは。

 

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街の真骨頂は、4項目8種類のフィールドスキルによる深掘りにあります。
 ・街人の詳しい解説が読めて、隠しアイテム等を得られる「聞き出す」「探る」
 ・街人の持ち物を手に入れられる「買い取る」「盗む」
 ・街人を外に連れ出し、戦闘の支援をさせることができる「導く」「誘惑」
 ・街人とその場で戦うことができる「試合」「けしかける」

 

一見入口で街の名前を教えてくれるだけの女性が実は腕自慢だったり、佇む御老人の若かりし頃を知ることができたり、屋敷の番犬達にそれぞれ性格の違いがあったり…いわゆる「村人A」に留まらない、へぇと思わせる設定の数々。
意外な人物が意外に強力な武器を所持していたり、強力な技を持っていたり。

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各キャラクターに隠されたそれらの要素が、単なる案内役や引き立て役だけでないそれぞれの存在感を与えており、その世界に生きる住人である実感とゲーム的な付加価値を与えているのです。

 ゲーム開始時は主人公に選んだひとりの持つフィールドスキルしか使えませんが、キャラクターが集まり4項目のフィールドスキル全てを使えるようになると、街が単なる拠点に留まらない様々な要素を含んだ舞台として機能します。

  

・コンパクトかつ応用性があり、戦術的妙味を味わえる戦闘システム

 

このゲーム最大の醍醐味といえるのが、行動ブーストを活用した戦術が重要なバトル。

 

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敵に設定されている弱点属性を突くことで敵のブレイクポイントを減らし、ゼロにすればブレイクして次のターンまで行動不能かつ被ダメージ増にすることができる。

毎ターン1つづつ貯まるBP(ブーストポイント)を最大3つまで消費することで、通常攻撃の回数を増やしたり固有技の効果を高めることができる。
(ただしBPを使ったターンの終了時はBPは増えない)

 

要点はこの2つ。
このゲームの敵は概してHPが高く、危険度レベル的に互角の雑魚敵でも通常攻撃を2、3度当てた程度では倒れるどころか半減もしません。そのうえ体力が少なくなると全体攻撃や連続ヒット技などの危険な攻撃を仕掛けてくる傾向があります。
そこで最初は通常攻撃で弱点を突いてブレイクポイントを減らし、相手が大技を使ってくる前にブレイクで動きを止めて、すかさずBPを注ぎ込んだ強力な攻撃を叩き込む、という戦法が基本になるのです。

 

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BPによる強化の恩恵は凄まじく、BPを1つ使う毎にダメージを2倍3倍に高めてくれます。
またBPの使い所は攻撃力の強化だけではなく、通常攻撃を連続で繰り出してブレイクポイントを一気に減らす、防御力アップや挑発などといった補助効果の効果ターン数を引き上げる、盗むなどの特殊技の成功率を上げる、と様々。
BPは原則として「BP強化を使わなかったターンの終了時にのみ+1される」ので、どう蓄積させてどう使うか、先を考えて行動を決める戦術性が要求されます。

 

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基本的な戦闘コマンドは「通常攻撃」「MP的なものを消費する回復・攻撃・補助などの特殊技」「アイテム使用」「防御」と、 RPGで一般的なものばかりで、それほど複雑ではありません。しかしそこに先述した2つの要素が加わることで、よくあるコマンドバトルとは一線を画する、非常にやりごたえのある戦闘システムに仕上がっています。手強い攻撃を繰り出すボスをねじ伏せたときの快感は格別ですよ。

 
・2DRPGファンに、そして探求を好むプレイヤーに

 

というわけで、ゲーム序盤から味わえるオクトパストラベラーの魅力について触れていきました。

これらの要素を振り返って感じるのは、2DRPGで昔から使われているシステムに現代的な工夫を加えることで、2DRPGという作品で得ることが難しかった芳醇さを得ることに成功しているということです。古典的ジャンルと言って差し支えない2DRPGにおいて、新しい風を起こしてくれた作品であるように思います。

 

ここまでほぼベタ褒めな内容ですが、現時点で気になる欠点としては
「メッセージ送りがややもっさり気味で会話テンポがいまひとつ
「店の品揃えが場所によってまちまちなので一部の消費アイテム調達がやや不便
8人分のオープニングシナリオを立て続けにやっていくのが面倒
な点があります。あと、雑魚戦でもある程度考えて技を使う必要があるのでチマチマしててスピーディーさに欠けると感じる方もいるのではないかと思います。
ストーリーを追う要素よりも作品世界を探求する要素が重視されている作品かなと思うので、常に流れるようなゲームプレイをしたい人には向かないかもしれません。逆に興味の赴くままに探りをいれたいプレイヤーにとっては、絶好の舞台といえます。

 

ec.nintendo.com

e-shopにある体験版では、製品版と同じ内容で3時間まで序盤をプレイすることができます。主人公に選んだキャラクターの第一章と、そこからさらに1-2人を仲間に加えられるくらいは遊べます。体験版のセーブデータを製品版に引き継げるので、興味を持った方は是非体験版を試してみてください。3時間の範囲でも、上に書いた各要素を存分に味わうことが出来ます。

 

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今回書いた内容はあくまで入口部分です。
私は現時点で20時間プレイし、「バトルジョブ」の一つを初めて発見したところ。つまり、ここからさらに各キャラクターの技や能力を追加する要素が用意されているのです。先に触れたとおりこのゲームの戦闘は戦術性が非常に高いので、キャラクターを育てて戦闘の幅を広げるのが楽しみで仕方ありません。
各キャラクターのメインストーリーもまだ始まったばかりで、8人それぞれの個性的なシナリオがどう展開するのかも非常に楽しみです。
世界の探索も、私は今のところ危険度の少ない場所から順にめぐっていますが、あえて奥地に潜り込んでいくプレイスタイルも楽しいものでしょう。
まだまだ様々な魅力がこの作品には溢れています。

 

2DRPGの最先端たるこの作品が最終的にどんな体験をもたらすのか、それは後日、クリアした際に詳しく書く予定です。まずはこのワクワクに満ちた世界を、心ゆくまで旅していきたいと思います。